ScTN質問紙の解説ページにおける調査データの可視化例の追加
当法人が提供・管理するScTN質問紙については、MEXCBTを通じた実施にとどまらず、自治体や学校による独自の集計・可視化フォーマットが開発されるなど、さまざまな形でご活用いただいているところです。
このたび、調査データを可視化する際の参考となるよう、ScTN質問紙の解説ページ内にある「4 調査データの集計と可視化」の「(2)調査データの可視化」に、四つのグラフ例を追加しました。
1 学校教育の経験
四つのグラフ例のうち最初の一つは、「ア 学校教育の経験」に関するものです。ScTN質問紙の授業づくりや学級・学校づくりに関する観点は、既存の心理尺度の多くに見られるような同一の構成概念を類似した質問項目によって反復的に測定する構成を取っていません。例えば、「個別の学び」の観点は、児童生徒の「個性化した学習」と教員による「個別化した指導」という、「行為の主体」の点で趣旨の異なる二つの項目から構成されています。
そこでグラフ例では、従来例示していた集団の平均値を観点別に示すレーダーチャート(左)に加え、観点の趣旨別(右)を追加しました。これらのグラフを併用することで、例えば「民主的な学校生活」の観点の平均値は3.1である一方、その内訳を見ると、「民主的な学級づくり」を趣旨とする項目は3.3、「民主的な学校づくり」を趣旨とする項目は3.0であることが確認できます。
また、当法人がこれまでに関わった複数の事例では、学びの構造転換によって児童生徒が自分なり・自分たちなりに学ぶ授業が日常化した学級において、「個性化した学習」と「内発的な協同」を趣旨とする項目の平均値がともに4.0を上回り、かつ、前者の値が後者の値を上回るか、または両者の値が均衡する傾向があることを確認しています。こうした考察も、観点の趣旨別のグラフを用いることで容易に行うことができるようになります。
参考:「個性化した学習」と「内発的な協同」の平均値がともに4.0を上回り、かつ、前者の値が後者の値を上回っている学級の例 ※論文の図6に掲載
2 認知的個性としての多重知能
次の二つは、「エ 自分らしさの知覚(例)」に示した「認知的個性としての多重知能」に関するものです。多重知能理論は、従来、一般知能説の対抗説として位置付けられていました。一方、ScTN質問紙では、認知的個性を捉える一つの観点として再構築しています。
可視化に当たって重要なことは、集団の平均値等を算出して比較するというよりはむしろ、児童生徒一人一人が自覚している「好き」や「得意」を捉え、それらを日々の学びや生活に活かせるようにすることにあります。そこでグラフ例では、X軸に「好き‐嫌い」、Y軸に「得意‐苦手」の回答データを用い、児童生徒一人一人をプロットしています。
また、回帰直線を加えることで、各知能側面における「好き」と「得意」の関連の方向や程度も概観しやすくなります。
3 教科等に関する調査のデータとの組み合わせ
最後の一つは、「オ その他の調査データとの組み合わせ(例)」に示した「教科等に関する調査」のデータと組み合わせたものです。ScTN質問紙では、「知識及び技能」や「思考力、判断力、表現力等」を測定対象としていません。しかし、全国学力・学習状況調査や自治体独自の学力調査、単元テストや定期考査等のデータと組み合わせることで、児童生徒一人一人や集団への理解をさらに深めることができます。
グラフ例では、X軸に国語科、Y軸に算数・数学科の正答率から換算した標準得点を用いています。いずれも、自治体全体の平均が50、標準偏差が10となるよう換算したものです。また、バブルサイズには、質問紙のうち「教師からの認知的共感(先生は、自分のことを認めてくれていると思う)」の回答データを用い、肯定的な回答ほど大きく表示しています。
右上の象限や分布の左下にはバブルサイズが大きい児童生徒が多い一方、両教科の標準得点が平均付近からやや低い範囲には、バブルサイズの小さな児童生徒が散在していることが確認できます。こうした可視化は、教科の得点だけでは捉えにくい児童生徒の学びや生活を取り巻く状況を把握し、授業改善、ひいては学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合による学びの構造転換を具体化するためのエビデンスの一つとして活用することができます。一斉一律に学習する構造の授業のみでは、このグラフ例に表れているような児童生徒一人一人の状況に対応することは難しいと考えられるからです。
今後も、解説内容や可視化例を順次拡充していく予定です。ご参照・ご活用いただければ幸いです。