ScTN質問紙の概要
ScTN質問紙は、一般社団法人 School Transformation Networking(ScTN)が提供及び管理する、児童生徒の自己評価を回答方式とした「主体的・対話的で深い学びのための意識・実態調査質問紙」です。
本質問紙は、「ある教育の実践/政策は、どのような状態であれば公教育の本質と正当性の原理にかなうのか」ということを、教育学や心理学等の理論に基づき、質問項目とその体系という形で具体化しています。
内容としては、大きく分けると、(1)主体的・対話的で深い学びを中心とした「学校教育の経験」とともに、(2)経験がもたらす「成長」としての「学びに向かう力」と「人間性」の育成状況、(3)経験と成長を通した「学校教育の成果の実感」を測ることができるようになっています。よって、現在の学びの在り方を、公教育の本質と正当性の原理にかなうよう、主体的・対話的で深いものに構造転換する支援ツールとして活用することができます。
以下は、内容の一例です。
※後述する三つの基本パッケージのうち、「ScTN質問紙ベーシック」に含まれる質問項目を表示しています。全ての質問項目は、こちらからご確認いただけます。 ※質問紙の作成過程における調査の結果は、こちらからご覧いただけます。
なお、ScTN質問紙は、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 パブリック・ライセンスの下に提供しています。本ライセンスの条件に従う限り、誰でも、自由にご利用いただけます。
詳しくは、「よくある質問」をご覧ください。
ScTN質問紙の詳細
ScTN質問紙(主体的・対話的で深い学びのための意識・実態調査質問紙)は、学校や教育委員会をはじめとした学校教育の現場でニーズの高い、「主体的・対話的で深い学び」の実現状況を測るアセスメントとして開発をスタートしました。
具体的には、公教育の本質である「各人の自由及び社会における自由の相互承認の実質化」のため、「一般福祉(一般意志に基づく普遍福祉)」を正当性の原理とし、学習指導要領等が求める資質・能力や学習活動の実現に資するよう、教育学や心理学等の理論を根拠に体系化されています。
つまり、公教育は何のためにあるのか(本質)、どうあれば「よい」のか(正当性の原理)という根本の土台を築き、関連する学術領域の知見と教育データを具体的な手だてや施策にまで結び付ける。
当法人が提唱する「哲学原理とエビデンスに基づいた実践/政策(P-EBP)」の考え方を具体化するためのツールの一つが、ScTN質問紙です。
ScTN質問紙による調査を通して、(1)児童生徒の主体的・対話的で深い学びを中心とした「学校教育の経験」とともに、(2)経験がもたらす「成長」としての「学びに向かう力」と「人間性」の育成状況、(3)経験と成長を通した「学校教育の成果の実感」を測ることができます。
先生方や学校管理職は、調査の結果をリフレクションツールとすることで、データに基づいて児童生徒一人一人や集団への理解を深めるとともに、現在の学びの在り方を主体的・対話的で深いものに構造転換するための示唆を得ることができます。
また、教育委員会(学校設置者)は、調査結果はもちろん、質問紙に含まれる観点や質問項目をコミュニケーションツールとすることで、学校や地域との対話を通して必要な支援や条件整備等を考えることができるようになります。
参考文献 ・【公教育の本質・正当性の原理】苫野 一徳(2011).どのような教育が「よい」教育か 講談社
1 開発の経緯
(1)教育分野のDXに向けた現状と課題
教育分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取組みでは、2段階目となるDigitalization(デジタライゼーション)において、最適化を志向したデータ駆動型教育の実現が求められています。
しかし、現状では、学力テストの結果やデジタルドリル等の一部コンテンツから得られる学習ログに加え、児童生徒や保護者が回答する質問紙調査の結果くらいしか誰もが活用可能な教育データがありません。
また、社会的・情動的スキル(従来の非認知的スキル)のように、学校や教室内における児童生徒の多様化もあってこれまで以上に重要視されている資質・能力でも、その育成状況を体系的に、とりわけ本質的・原理的に把握するための調査がないという課題がありました。
(2)P-EBPに基づくパラメータ体系の構築と質問紙の開発
そこで当法人では、まず、(1)児童生徒に育成を目指す資質・能力と、(2)その支えとなる学習経験・教育環境、(3)前者の育成と後者の選択の両方に影響するパーソナリティ特性や認知的個性をはじめとした素質の三区分から、測定の観点(構成概念)と評価規準の趣旨(観測変数)を設定していきました。公教育の本質と正当性の原理に基づいて教育データを取得・活用するための基礎理論を構築する作業であり、この作業を通して体系化したパラメータ群を「目的‐方法パラメータ」と呼称しています。


パラメータ体系を構築した背景には、あらゆる教育データは「公教育の本質と正当性の原理にかなう」という意味において「適切」に取得・活用されなければならないという問題意識があります。当法人が提唱する哲学原理とエビデンスに基づいた実践/政策(P-EBP)の考え方です。
例えば、子どもたちは、自分らしく学んだり生活したりすることを通じてよりよく成長していく権利をもった主体です。よって、子どもたち一人一人の同意なきデータの取得は、どのようなものであれ禁忌とすべきことは言うまでもありません。しかし、データの連携や分析に当たっては、それだけでは全く十分ではありません。公教育の本質と正当性の原理に照らし、「データは、特定の子どもの個別最適な学びや自由の実質化のみならず、全ての子どもの協働的な学びや自由の相互承認の実質化にまでかなうよう活用されているか」といったように問わなければならないからです。
だからこそ、まず、教育データを取得・活用するための基礎理論を構築する必要があったのです。そして、次に、この基礎理論=目的‐方法パラメータに基づいて実際にデータを取得するために、測定道具の第一として、児童生徒による自己評価を回答方式とした質問紙を開発しました。
それが、「ScTN質問紙(主体的・対話的で深い学びのための意識・実態調査質問紙)」に他なりません。
(3)ScTN質問紙の特徴
ScTN質問紙の一番の特徴は、主体的・対話的で深い学びの実現状況を、学びに向かう力と人間性の育成状況と関連付け、しかも、教育学や心理学はもちろん、哲学の知見に基づいて把握できることです。
学術的にも価値のあるデータを取得し、その他のデータと連携して分析することで、公教育の本質と正当性の原理にかなう教育DXにつなげることができます。具体的には、データを、各人の自由の実質化につながる「誰もが自分らしく学んだり生活したりすることを妨げられない学校」の実現や、社会における自由の相互承認の実質化、さらには一般福祉の促進につながる「全ての人が互いに認め合い、高め合って学んだり生活したりすることのできる教育」の実現など、学びの構造転換、ひいては公教育全体の構造転換に資するものにできるということです。
2 基本構成と内容
ScTN質問紙の内容は、先述の目的‐方法パラメータを基礎理論とした三つの基本領域(大領域)から構成されています。(1)「学校教育の経験」、(2)経験がもたらす「成長」、(3)経験と成長を通した「学校教育の成果の実感」であり、これらの領域間には因果関係が仮定されています。
(1)学校教育の経験
児童生徒の成長は、学校教育の経験から大きく影響を受けます。大別すれば、学校での「学び」と「生活」の二つの側面からの経験です。
ア 学校での学び
(ア)内容の設計 まず、学校での学びとは、学習指導要領等が示す主体的・対話的で深い学びを目指すものです。ScTN質問紙では、その実現に資するよう、「本物の学び」「探究の学び」「個別の学び」「協同の学び」の4観点から質問項目を設定しています。
現在の学校での学びの在り方を、全ての児童生徒の自由と自由の相互承認の実質化につながるよう、主体的・対話的で深いものに構造転換するためには、学びを日常生活や社会の現実の状況に埋め込んで自己決定で貫いたり、自分なりに問いや課題を立てて試行錯誤したりできるようにする必要があります。また、言語や文化、特別な支援や特異な才能、家庭や家族等の事情から共に学ぶ機会を得られずにいる児童生徒を全て包摂し、いじめや不登校をはじめとした生徒指導上の課題に予防的・発達支持的に対応するためにも、個別最適な学び(指導の個別化・学習の個性化)を実現したり、協働的な学びを一体的に充実したりすることが必要になります。
手だてとしては、プロジェクト型学習や自由進度学習を例に挙げることができます。また、生活教育や学際科学を基にした総合学習、事実的知識を転移可能な概念的知識に抽象していく概念型学習、通常の学級と特別支援学級・学校による交流学習、あるいは教員による後追いの明示的指導や共同探究を挙げることもできます。これらはもちろん組み合わせることも可能であり、交流学習を前提にプロジェクト型の単元を自由進度で展開するといった場合もあるでしょう。
各観点の下に設定した質問項目は、このような手だてを単元や時において具体化する示唆となるよう作成してあります。本物の学びであれば、「状況に埋め込まれた学習」を趣旨とした「授業では、普段の生活のことや、社会で問題・話題になっていることを材料に学んでいる」、探究の学びであれば、「内発的な探究」を趣旨とした「授業では、自分の興味や関心に基づいて、自分なりに問いや課題を立てて学んでいる」などです。また、個別の学びであれば、「個性化した学習」を趣旨とした「授業では、学習の方法やペースを自分で選んだり決めたりしながら学んでいる」、協同の学びであれば、「内発的な協同」を趣旨とした「授業では、自分が必要な時に、必要な仲間と協力しながら学んでいる」などです。
なお、通常と特別支援の分離を前提しない共同学習は、手だての一つというよりはむしろ、学校が目指すべき教育の望ましい在り方であると考えることができます。このことについては、後述します。
(イ)質問項目と回答選択肢(全8項目)
イ 学校での生活
(ア)内容の設計 次に、学校での生活とは、主体的・対話的で深い学びを基礎としながらも、児童生徒が民主的で持続可能な社会の創り手となることによりいっそうの重点が置かれます。このことを踏まえ、ScTN質問紙では、「民主的な学校生活」の観点から質問項目を設定しています。
学校での生活を通し、一般福祉を正当性の原理とした市民社会の成熟に向けて市民性を育むためには、自分とは異質な他者に対する想像力を働かせ、会ったことのない遠く見知らぬ他者はもちろん、今はもう存在しない過去の他者や、これから存在するかもしれない未来の他者にまで配慮できるようにしていく必要があります。また、互いを自由で対等な社会の一員として認め合ったり、自分たちの生きるこの社会はみんなの合意と合力によって変えられるという経験を積み重ねたりしていく必要もあります。
手だてとしては、ベースとなる毎日のサークル対話や、児童生徒が生活の当事者として主体的に進める教室リフォームを挙げることができます。また、校則の見直しをはじめ学校全体で取り組むこともできるルールメイキングなど、さまざまなものがあります。
民主的な学校生活の観点の下に設定した二つの質問項目は、このような手だてを学級経営や学校経営において具体化する示唆となるよう作成してあります。具体的には、「民主的な学級づくり」を趣旨とした「学級のみんなに関わることは、自分たちで、全員の考えや気持ちを確かめてから決めている」と、「民主的な学校づくり」を趣旨とした「学校生活で誰かが疑問に思ったことは、全校で話し合ったり、みんなで合意して変えたりしている」です。
なお、これらの項目は、学校がどれだけ実社会の多様性を反映しているかによって、意味の受け取り方が大きく変わることにも特徴があります。異なる学年や年齢、複数の言語や文化の交わりはもちろん、先述の共同学習がどれだけ日常であるかも同様です。言い換えれば、学校での生活、ひいては学びとは、市民社会の成熟に向けた望ましい在り方として、通常と特別支援といった分離を前提しない統合教育(フルインクルーシブ教育)をどこまでも目指し続ける必要があるということでもあります。
(イ)質問項目と回答選択肢(全2項目)
(2)成長
(1)で説明した学校教育の経験は、児童生徒によりよい成長を促すためのものです。具体的には、学習指導要領等が示す「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つを柱とした資質・能力の育成が目標になります。
先述の目的‐方法パラメータでは、便宜的に、三つの柱のうち学びに向かう力・人間性等を資質に、知識及び技能と思考力・判断力・表現力等を能力に分類しています。OECDによる「認知的・メタ認知的スキル(cognitive and meta-cognitive skills)」と「社会的・情動的スキル(social and emotional skills、従来の非認知的スキル)」の分類に基づくならば、認知的スキルに対応するものが能力であり、メタ認知的スキルと社会的・情動的スキルに対応するものが資質です。
このような整理の下、ScTN質問紙の成長領域では、測定対象を資質に限定しています。ここで注意が必要なのは、資質=非認知的スキルではないことです。OECDが、当初、「認知」ではないスキルを一括りに「非認知的(non-cognitive、認知に非ず)」と表現した影響からか、この用語には、概念的定義が曖昧なものや、個人によって解釈が異なるものがあります。「実践的・身体的スキル(practical and physical skills)」が第三の分類として明示されている現状を考慮すれば、「非認知的スキル(non-cognitive skills)」という用語の使用はなおさら適切ではないと考えます。
ア 学びに向かう力
(ア)内容の設計 上記の考えの下、ScTN質問紙の学びに向かう力については、「学びの動機」と「学びの自己調整力/方略」「学びの相互調整力/方略」の観点から質問項目を設定しています。個別の学びの観点との関連が強い自分の学びを自分なり進める自己調整のみならず、協同の学びの観点との関連が強い自分たちの学びを自分たちなり進める相互調整を設定しているところに、ScTN質問紙の独自性があります。
公教育の本質の一つである自由、その実質化につながる主体的な学びのためには、学びの動機(づけ)と自己調整のみで十分かもしれません。しかし、自由の相互承認の実質化、さらには一般福祉の促進につながる対話的な学びを一体的に充実することでより深い学びへと至るためには、共調整と社会的に共有された調整、すなわち相互調整も明示的に体系に位置付けるべきとの考えに基づくものです。
(イ)学びの動機 具体的には、まず、学びの動機について、「内発的動機」を趣旨とした「『知りたい』『分かりたい』『できるようになりたい』と思っていることがある」と、「外発的動機」を趣旨とした「他の人から勧められたことは、興味がなくても、自分で調べたりやってみたりしている」を設定しています。前者は、学びを通した自由への欲望、言い換えれば、成長への内発的な意欲を内容としています。後者は、自己決定理論の下位理論である有機的統合理論に基づき、外発的動機の中でも自己決定性がより高い同一化(identification)又は統合(integration)の段階を想定した内容としています。成長に対する外発的動機の価値を認めつつ、自由の実質化により資する内容とするためです。
(ウ)学びの自己調整力/方略、学びの相互調整力/方略 次に、学びの自己調整力/方略と相互調整力/方略については、「予見」「遂行」「省察」を趣旨とした質問項目を複数設定しています。調整学習の理論的伝統を踏まえつつも、OECDが提唱する「AAR(Anticipation-Action-Reflection)サイクル」に基づいた設定です。
AARサイクルに基づいた理由は、そのプロセスが、学習そのものにとどまらず、個人と社会のウェルビーイング(well-being)に向けたものであると明示されているからです。しかしながら、「どのような状態がウェルビーイングなのか」という問いについては、類似した概念である幸福(happiness)がそうであるように、時間や場所、人の価値観の違いによってさまざまな答えがあることも確かです。幸福に独立的(independent、又は獲得的)なモードと相互依存的(interdependent、又は協調的)なモードがあることは、その代表例と言えるでしょう。
そこでScTN質問紙では、ウェルビーイングと幸福について、前者が持続的、後者が一時的といった区別ができることを踏まえつつも、「ある快楽を達成した状態」を意味する点では同型の概念であると捉えます。その上で、ある個人や社会がウェルビーイング又は幸福とみなしたさまざまな状態に通底する本質を観取すると、そこには、「自由の感度」が見いだされると整理しています。ウェルビーイングや幸福とみなされた状態は、どのようなものであれ、その底に「自分の生きたいように生きられている」という意味での自由の実感があるということです。
よって、一時的にも持続的にも、独立的と相互依存的をはじめ一人一人異なる幸福やウェルビーイングの状態を尊重し合いながら、誰もが自由に生きられることを目的として学習プロセスを展開すること。AARサイクルが目指す個人と社会の在り方は、公教育の本質と正当性の原理から、そのように再定義できます。学びの自己調整方略と相互調整方略の質問項目として、遂行を趣旨とした「学ぶことを通して、自分なりの表現や、自分らしさを追い求めること」や、「学ぶことを通して、自分たちなりの表現や、自分たちらしさを追い求めること」を設定したのは、再定義したAARサイクルによるものです。省察を趣旨とした「自分が得意なことをもっと生かした学び方がないか、考えながら学びを進めること」や、「一人一人のよさがもっと生きる協力の仕方がないか、考えながら学びを進めること」なども同様です。
(エ)質問項目と回答選択肢(全36項目) ※以下は一部、全質問項目はこちら
イ 人間性
(ア)内容の設計 ScTN質問紙の人間性については、下位領域として「自分自身のこと」「他者との関係」「集団や社会の形成」「崇高なものの実感」を定め、その下で観点と質問項目を設定しています。これらの下位領域は道徳科に準拠こそしているものの、設定した観点は教育学や心理学等の理論に基づいた社会的・情動的スキルに関するものであることに注意してください。
具体的には、主として自由の実質化につながる自分自身のこと領域の観点として「自己効力感」と「自己受容感」を、自由の相互承認につながる他者との関係領域の観点として「他者への受容感」と「他者からの受容感」を、さらに、一般福祉につながる集団や社会の形成領域の観点として「集合効力感」を設定しています。最後の崇高なものの実感領域に設定した「自己超越感」は、自由の相互承認や一般福祉はもちろん、両者を土台とした自由の実質化に特につながると考えられる観点です。
(イ)自己効力感 ScTN質問紙の独自性が比較的高い内容としては、第一に、自己効力感に関するものが挙げられます。「自分ならできる」という確信を意味するこの観点は、意味上の重なりから自由(の感度)の中心的な属性に位置付けた上で、まず、「効力信念」を趣旨とした「自分は、努力をすれば、大抵のことができるようになると思う」を設定しています。これに続く「回復力」「目標の課題志向性」「粘り強さ」を趣旨とした質問項目は、「やり抜く力(GRIT)」を自己効力感の下位特性に位置付けた上で、個別の学びや学びの自己調整力/方略を観点とした質問項目の内容とも関連付けて設定してあります。調整学習における粘り強さとも関連するやり抜く力の重要性を認めつつも、その構成因子である度胸(Guts)や復元力(Resilience)、自発性(Initiative)や執念(Tenacity)などは、心理学史的にも先行し、かつ、自由の感度の中心的な属性に位置付けた自己効力感を高く知覚する者の認知や行動の特徴に既に含まれていたことが主な理由です。
(ウ)自己受容感 第二には、自己受容感に関するものが挙げられます。「自尊感情」における自己に対する態度のうち肯定面のみを継承したこの観点には、「自己の肯定面の受容」と「自己の否定面の受容」を趣旨とした質問項目に加えて、「生存及び発達権の保護感」を趣旨とした「自分は、安心して暮らしたり、学んでよりよく成長したりするために、周りの大人から大切にされる存在だと思える」と、「意見表明権の保護感」を趣旨とした「自分は、自分のことで『もっと、こうだったらいいな』と思ったことを、周りの大人に伝えてもいい存在だと思える」を設定しています。児童の権利に関する条約を踏まえたものであり、自己の肯定面と否定面をらしさに止揚して受容するための安全基地になる内容としています。
(エ)他者への受容感、他者からの受容感 第三には、他者への受容感と他者からの受容感に関するものが挙げられます。自己決定理論における「関係性(への欲求)」を相互関係として分割したこれらの観点には、(相手への)認知的共感性」を趣旨とした「相手が自分とは違う考えや気持ちでも、最初から否定しないで受け止めている」や、「仲間からの認知的共感」を趣旨とした「学校には、自分の考えや気持ちを分かってくれる仲間がいる」などを設定しています。自由の相互承認に基づいて概念を再解釈したものであり、質問項目の内容は、協同の学びや学びの相互調整力/方略を観点とした質問項目の内容とも関連付けて設定してあります。
(オ)集合効力感 第四には、集合効力感に関するものが挙げられます。自己効力感と対置され、「自分たちならできる」という確信を意味するこの観点には、「学級生活の集合効力信念」を趣旨とした「いまの学級のメンバーなら、協力して、自分も他の人も全員が居心地のよい学級がつくれると思う」や、「学校生活の集合効力信念」を趣旨とした「いまの学校のみんななら、協力して、全員が通うことが楽しくなる学校をつくれると思う」などを設定しています。一般福祉に基づいて概念を再解釈したものであり、質問項目の内容は、協同の学びや学びの相互調整力/方略、他者への受容感や他者からの受容感はもちろん、民主的な学校生活を観点とした質問項目の内容とも関連付けて設定してあります。
(カ)自己超越感 第五には、自己超越感に関するものが挙げられます。この観点は、老年医学における「老年的超越」の概念を全世代版として継承発展したものです。道徳科の「主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」領域の趣旨や内容項目も踏まえた上で、「自由への欲望」「愛の意志」「美の探求」「自然への畏怖」を趣旨とした質問項目を設定しています。いずれも、自由を本質とした人間的欲望の属性の一つである「至高性」、その具体的な現れである「自分自身を超え出る」という点において共通性をもつ内容です。
(キ)質問項目と回答選択肢(全24項目) ※以下は一部、全質問項目はこちら
(3)学校教育の成果の実感
(1)(2)で説明した学校教育の経験と経験を通した成長は、児童生徒に成果として実感されていきます。大別すれば、「成長の実感」と「充実感」の二つの側面からの成果の実感です。
ア 内容の設計
児童生徒の成長は、当然のことながら、学校教育の経験によってのみ促されるわけではありません。言い換えれば、学校内外のさまざまな経験を通して資質を開花させたり能力を伸ばしたりしていくということです。
このような整理の下、ScTN質問紙では、成果の実感領域の測定対象を学校教育に限定し、「学校教育を通した成長の実感」と「学校教育の充実感」の観点から質問項目を設定しています。
イ 学校教育を通した成長の実感
具体的には、まず、学校教育を通した成長の実感について、「生活の陶冶」を趣旨とした「授業で学ぶことによって、毎日の生活を、自分でよりよくするためにできることが増えている」と、「市民性の育成」を趣旨とした「みんなと一緒に過ごすことによって、社会を、自分たちで変えるための知識や考え方が身に付いている」を設定しています。前者は自由の実質化、後者は自由の相互承認の実質化、さらには一般福祉の促進につながることを想定した内容です。
ウ 学校教育の充実感
次に、学校教育の充実感については、「通学の喜び」を趣旨とした「学校が楽しい」を設定しています。全ての児童生徒が、毎日、「楽しい」と思って通学できるように。また、その「楽しい」という気持ちが、できるだけ、生活の陶冶と市民性の育成を中心とした確かな成長の実感に支えられたものになるように。そのような願いを込めて、質問項目を設定しています。
逆説的には、ScTN質問紙は、全ての児童生徒が毎日「楽しい」と思って学校で学んだり生活したりするという現象の全体性(≠全部)を、公教育の本質と正当性の原理にかなうよう、学習指導要領等が求める資質・能力や学習活動を踏まえつつ、理論的かつ体系的に構造化=成立条件へとブレイクダウンしているということでもあります。説明の終着点であった「学校が楽しい」という質問項目を今度は始発点とし、学校教育の成果の実感から成長へ、成長から学校教育の経験へと質問紙の内容を辿り直すと、そのことを理解していただくことができるはずです。
エ 質問項目と回答選択肢(全3項目)
(4)既存尺度や先行研究との関連
ここまでに説明したScTN質問紙の基本構成・内容と既存尺度・先行研究との関連については、主な参考文献を下記しました。
なお、このことについては、以下のドキュメント内の「質問4:ScTN質問紙の既存尺度や先行研究との関連について」を併せてご参照ください。ScTN質問紙の解説はもちろん、その基礎にあるP-EBPの考え方が、政策に基づくエビデンス形成(Policy Based Evidence Making)として知られるEBPMの倫理的問題や、従来の操作主義、とりわけ実証に関する問題を、認識論をはじめとした哲学原理によって克服しようとしていることなどについても説明しています。
ア 学校教育の経験
・【本物の学び・状況に埋め込まれた学習】Lave, J. & Wenger, E. (1991). Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation. Cambridge University Press.(レイヴ,J.・ウェンガー,E. 佐伯 胖(訳)(1993).状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加―― 産業図書) ・【本物の学び・状況に埋め込まれた学習】Wiggins, G. (1998). Educative Assessment : Designing Assessments to Inform and Improve Student Performance. Jossey Bass Publishers. ・【本物の学び・自己決定に貫かれた学習】Knowles, M. S. (1988). The Modern Practice of Adult Education: From Pedagogy to Andragogy. Cambridge Book Co.(ノールズ,M. 堀 薫夫・三輪 建二監(訳)(2002).成人教育の現代的実践――ベダゴジーからアンドラゴジーへ―― 鳳書房) ・【探究の学び、概念型学習】Erickson, H. L., Lanning, L. A., & French, R. (2017). Concept-Based Curriculum and Instruction for the Thinking Classroom. Corwin.(エリクソン,H. L.・ラニング,L. R.・フレンチ R. 遠藤 みゆき・ベアード 真理子(訳)(2020).思考する教室をつくる――概念型カリキュラムの理論と実践―― 北大路書房) ・【個別の学び・協同の学び、プロジェクト型学習・自由進度学習】苫野 一徳(2014).教育の力 講談社 ・【本物の学び・探究の学び・個別の学び・協同の学び・民主的な学校生活、プロジェクト型学習・自由進度学習・統合教育における共同学習・サークル対話・教室リフォーム】Velthausz, F., & Winters, H. (2014). Jenaplan school waar je leert samenleven. NJPV Zutphen.(フェルトハウズ,F.・ウィンタース,H. リヒテルズ 直子(訳)(2020).イエナプラン――共に生きることを学ぶ学校―― ほんの木) ・【民主的な学校生活、教室リフォーム】岩瀬 直紀(編著)(2017).クラスがワクワク楽しくなる! 子どもとつくる教室リフォーム 学陽書房 ・【民主的な学校生活、ルールメイキング】苫野 一徳(監修) 古田 雄一・認定NPO法人カタリバ(編著)(2022).校則が変わる、生徒が変わる、学校が変わる――みんなのルールメイキングプロジェクト―― 学事出版
イ 成長
・【資質・能力の三つの柱の便宜的分類】本田 由紀(2020).教育は何を評価してきたのか 岩波書店 ・【スキルの分類】OECD. (2019). Skills for 2030 concept note. https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/about/projects/edu/education-2040/concept-notes/Skills_for_2030_concept_note.pdf. ・【学びの動機、自己決定理論・有機的統合理論】Ryan, R.M., & Deci, E. L. (2000). Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions. Contemporary Educational Psychology 25, 54–67. https://selfdeterminationtheory.org/. ・【学びの自己調整・相互調整、共調整・社会的に共有された調整】Zimmerman, B., & Schunk, D. H. (2011). Handbook of Self-Regulation of Learning and Performance. Routledge.(ジマーマン,B.・シャンク,D. H.(編) 塚野 州一・伊藤 崇達(監修・訳)(2014).自己調整学習ハンドブック 北大路書房) ・【学びの自己調整・相互調整、AARサイクル】OECD. (2019). AAR Cycle concept note. https://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/aar-cycle/AAR_Cycle_concept_note.pdf. ・【学びの自己調整・相互調整、ウェルビーイング・幸福】Seligman, M. (2011). Flourish: A New Understanding of Happiness and Wellbeing: The practical guide to using positive psychology to make you happier and healthier. Nicholas Brealey Publishing. (セリグマン,M. 宇野 カオリ(訳)(2014).ポジティブ心理学の挑戦――“幸福”から“持続的幸福”へ―― ディスカヴァー・トゥエンティワン) ・【学びの自己調整・相互調整、ウェルビーイング・幸福】Yukiko, U., & Jeremy,R. (2023). An Interdependent Approach to Happiness and Well-Being. Palgrave Macmillan. https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-031-26260-9 ・【自由・人間的欲望、幸福】苫野 一徳(2014).「自由」はいかに可能か――社会構想のための哲学―― NHK出版 ・【自己効力感・集合効力感】Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. W H Freeman and Company. ・【自己効力感、やり抜く力】Duckworth, A. (2016). Grit: The Power of Passion and Perseverance. Scribner. (ダックワース,A. 神崎 朗子(訳)(2016).やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける―― ダイヤモンド社) ・【自己受容感、自尊感情】Rosenberg, M. (1965). Society and adolescent self-image. Princeton University Press. ・【他者への受容感・他者からの受容感、関係性(への欲求)】Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior. Plenum Press. ・【自己超越感、老年的超越】Tornstam, L. (2005). Gerotranscendence: A Developmental Theory of Positive Aging. Springer Publishing Company.(トーンスタム,L. タカハシ マサミ・冨澤 公子(訳)(2017).老年的超越――歳を重ねる幸福感の世界―― 晃洋書房) ・【自己超越感・愛の意志】苫野 一徳(2019).愛 講談社 ・【自由・自己超越感・美の探求】竹田 青嗣(2017).欲望論第2巻――「価値」の原理論―― 講談社 ・【自己超越感・自然への畏怖】加藤 則芳(2012).森の聖者――自然保護の父ジョン・ミューア――(文庫版) 山と溪谷社 ・【自己超越感・自然への畏怖】Wright, F. L. (1953). The Nature House. Horizon Press. (ライト, F. L. 富岡 義人(訳)(2010).自然の家 筑摩書房)
3 調査の実施とパッケージ
ScTN質問紙は、基本となるパッケージを三つ提供しています。目的や時期等に応じて調査を実施できるようにするためです。
※あくまで例です。
(1)実施の方法
三つの基本パッケージは、後述する+1パッケージを含め、全て文部科学省提供の公的CBT(Computer Based Testing)プラットフォームであるMEXCBTに掲載されています。よって、MEXCBTを利用できる環境があれば、無償で実施することができます。
MEXCBTを利用したScTN質問紙の実施については、「よくある質問」をご覧ください。MEXCBTが利用できない場合は、ご自身で紙媒体やウェブ回答フォームを用意した上での実施をお願いいたします。
(2)実施の対象、質問紙の児童生徒向けの名称
対象は、小学校第3・4学年以上を想定しています。高等学校までを同じ質問項目で測定する設計です。
小学校第1・2学年では、質問項目をそのまま用いる以外の方法で実施された事例もあります。主には、以下の三つの方法です。
- 方法1:質問項目の表現を改変する。 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 パブリック・ライセンスに基づき、小学校第1・2学年向けの表現に翻案して実施する。 翻案によって、本来の趣旨から逸脱してしまわないように注意する。
- 方法2:先生などが解説する。 質問項目の表現はそのままとし、先生などが解説をしながら実施する。 解説の内容や程度、その個人差が回答に及ぼす影響に注意する。
- 方法3:具体例を付す。 質問項目の表現はそのままとし、授業や学校生活の場面の具体例(一文程度)を付して実施する。 具体例の内容や表現によっては、そこに表された場面のみを想起して回答してしまう可能性があることに注意する。
なお、ScTN質問紙は、児童生徒向けの名称として「もっと自分らしく学ぶためのアンケート」を用いています。MEXCBTの回答画面にも、この名称が合わせて表示されます。
(3)回答方法と教示文
回答選択肢は、全質問項目で5件法を採用しています。ただし、実際の回答に当たっては、児童の権利を踏まえ、未回答の許容を推奨しています。MEXCBTに掲載されているScTN質問紙も未回答を許容するように設定されていますので、ご注意ください。
教示文については、冒頭を「このアンケートは、あなたが、もっと自分らしく学ぶために行うものです」とし、大問1(1)の学校教育の経験、大問1(2)の学校教育の成果の実感、大問2と大問3(1)(2)の学びに向かう力、大問4の人間性にそれぞれのものを用意しています。
回答方法と教示文の詳細については、こちらでご確認ください。
(4)基本パッケージの構成と内容
ア ScTN質問紙ライト(所要時間:10分程度)
ライトパッケージは、学校教育の経験と学校教育の成果の実感に限定した7観点・13項目から構成されます。10分程度で簡便に実施できる一方、内容としては授業や学校生活で学びの構造転換を具体化するための最も基礎になる質問項目が含まれています。
授業に関する質問項目は、先生や教科、単元や時を限定した指標として活用することもできます。その場合は、各質問項目の「授業」を「国語科の授業」といったように読み替えて回答するよう教示して調査を実施してください。
イ ScTN質問紙ベーシック(所要時間:15分程度)
ベーシックパッケージは、ライトパッケージをベースとし、学びに向かう力に関する3観点・8項目と、人間性に関する6観点・12項目を加えたものです。全33項目から構成され、15分程度で実施することができます。
学びに向かう力と人間性については、学期ごとに結果がどのくらい変化しているかを見ることで、児童生徒一人一人の成長を捉える材料を得ることはもちろん、学校教育の経験が、どのような資質の変化を通して学校教育の成果の実感に結び付いているかを考察できるようになります。
ウ ScTN質問紙アドバンス(所要時間:25分程度)
アドバンスパッケージは、ベーシックパッケージをベースとし、学びに向かう力に関する26項目と人間性にに関する12項目を加えたものです。全71項目から構成され、25分程度の実施時間を必要とします。
年度初めのタイミングで実施することにより、前年度の取り組みを総括したり、新しい学年や学級、手だてや施策をスタートさせたりするために必要な情報を得ることができます。
(5)+1パッケージの構成と内容
+1パッケージは、必要に応じ、単独又は他のパッケージとともに実施することを想定して作成しています。
現在は、2023年11月1日に公開した「認知的個性」としての「多重知能」が利用できます。
ア ScTN質問紙+1(多重知能)(所要時間:10分程度)
(ア)内容の設計 知的活動における一人一人の「好き」や「得意」を意味する認知的個性は、パラメータの体系上、素質の一領域に設定しています。ScTN質問紙では、この認知的個性を捉える一観点として「多重知能理論」を援用しました。「一般知能説の対抗説」という本理論の従来の位置付けを、公教育の本質と正当性の原理にかなうよう再構築したものです。
具体的には、「私たちの理性による疑いや抗いを超えてなお『好きだな』『できそうだな』といった感覚が到来する物事については、遺伝的に能力がある可能性が高い」という行動遺伝学の知見に基づくことで、質問紙の観点や質問項目を設定しています。
素質を捉えるために設定した領域や観点には、パラメータの体系上、他の形質と比べて個人差に対する遺伝の個人差の影響が高いと見積もられているものを選定しています。もって生まれた素質は日々の行動の選択から人生の重大な決定にまで影響し、そうした選択と決定を積み重ねることで自分らしさを規定していく根本的な要因にもなっていると考えることができます。
言い換えれば、「自分らしくあることができている」という感覚(純粋性や一致の感覚、本来感)が生じる状態は、自らの遺伝的素質が発露を妨げられていない状態であると考えることができます。日々の行動や人生に素質が十分に活かされている状態ということもでき、教育の場面においては自由を実質化する成長の可能性が最大化している状態と捉えることができます。
これらを踏まえると、一人一人のらしさをさまざまな観点から捉えて日々の学びや生活に生かせるようにするとともに、そうした経験を通して成長の実感や充実感をもてるようにすることは、これからの学校教育が全ての児童生徒に保障すべき最低限のラインになると考えられます。
すなわち、「誰もが自分らしく学んだり生活したりすることを妨げられない学校」の実現です。それは、権利主体である子どもたちの自由を実質化することはもちろん、自由の相互承認の実質化、さらには一般福祉の促進につながる「全ての人が互いのらしさを認め合い、高め合って学んだり生活したりすることのできる教育」を実現する土台にもなります。
このような考えに基づいて作成した+1(多重知能)パッケージは、「言語」「論理数学」「空間」「身体運動」「音楽」「対人」「内省」「博物」という8つの知的活動それぞれについて、「好き‐嫌い」「得意‐苦手」で回答する計16問(=8×2)から構成されています。10分程度で実施することができ、一人一人の得意を生かす「個性最適な学び」はもちろん、互いの得意を生かし苦手を補い合う「協同最適な学び」や、その先にある個性の相互触発に基づいた「深い学び合い」の実現にも活用することができます。
ただし、調査結果は、あくまで、児童生徒による一時点の自己評価です。また、さまざまな形質の個人差に対する環境の個人差の影響が0にはならない以上、公教育は社会において変わらず重要であり続けます。さらに言えば、なりたい自分になろうとする個人の成長意欲は決して否定されず、むしろ、「なりたい」という欲望の到来自体が、らしさ、ひいては潜在的な能力の現れである可能性もあります。結果の活用に当たっては、P-EBPの考え方に従って公教育の本質と正当性の原理に常に基づくとともに、こうした行動遺伝学の知見に関する留意点を十分に踏まえてください。
(イ)質問項目と回答選択肢(全8項目(計16問))

(ウ)主な参考文献 ・【素質、知能説・行動遺伝学】安藤 寿康(2022).生まれが9割の世界をどう生きるか――遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋―― SBクリエイティブ ・【素質、知能説・行動遺伝学】安藤 寿康(2023).能力はどのように遺伝するのか――「生まれつき」と「努力」のあいだ―― 講談社 ・【多重知能理論】Grdner, H. (1995). Intelligence Reframed-Multiple Intelligences for the 21st Century. Basic Books.(ガードナー,H. 松村 暢隆(訳)(2001).MI:個性を生かす多重知能の理論 新曜社) ・【本来感】Kernis, M. H. (2003). Toward a conceptualization of optimal self-esteem. Psychological Inquiry, 14, 1-26.
(6)既存パッケージにはない内容の組み合わせによる利用
上記のパッケージにはない内容の組み合わせでScTN質問紙を利用したい場合は、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 パブリック・ライセンスの条件に従い、翻案物としてご自身の必要に応じた任意の組み合わせによる質問紙を作成いただくことができます。
詳しくは、「よくある質問」をご覧ください。
なお、ScTN質問紙は、ここまでに説明してきたように、領域間や観点間、質問項目間の相互関連による体系性や、学校教育における経験から成長、成果の実感までを一貫して捉える全体性を重視して構成されています。特定の質問項目を抽出して組み合わせる際には、この点にご注意ください。
4 調査データの集計と可視化
(1)調査データの集計
集計は、最も肯定の回答を5点~最も否定の回答を1点に換算した上で、質問項目ごと、観点ごと、領域ごと、大領域ごとに行うことが基本になります。
集計の基礎となるScTN質問紙の構成については、こちらでご確認ください。
なお、得点に重み付けをするかどうか、代表値や散布度をどのように算出するか、欠損回答をどのように扱うかなどについては、集計や分析を行う方の任意となります。
得点の重み付けの方法を考案するに当たっては、質問紙の作成過程における調査の結果等(こちら)もご参考ください。
(2)調査データの可視化
ア 学校教育の経験(例)
イ 成長(例)
(ア)学びに向かう力
(イ)人間性
ウ 学校教育の成果の実感(例)
なお、MEXCBTで実施したScTN質問紙の調査データを集計・可視化する「ScTN view」については、当法人の提供・管理下にはないため、このページでの解説はしておりません。
詳しくは、「よくある質問」の「ScTN viewについて知りたいのですが、どうしたらいいでしょうか?」をご覧ください。
5 研修資料、導入・活用事例
(1)研修会等のための参考資料
ScTN質問紙に関する研修会等を独自に実施したい方や、導入・活用事例を知りたい方のために、以下のスライド資料をご用意しています。
各スライドの解説は、スピーカーノートからご覧いただけます。生成AIを使ったポッドキャスト化などにも活用いただけるようにするためです。
■そもそも教育とは、ScTN質問紙とは――学び/公教育の構造転換のためのデータ活用
※本ページ内の埋め込み形式ではなく、Googleスライドでご覧になりたい場合は、こちらからアクセスしてください。表紙スライドのQRコードからもアクセスできます。
(2)主な導入事例
自治体や学校等におけるScTN質問紙の導入事例は、一般公開されている情報を中心に、当法人公式ウェブ内のニュースで随時ご紹介しています。
以下は、その主なものです。
(3)その他の活用事例
ア 教員の自己評価
ScTN質問紙は、教員の自己評価にも活用されています。当法人が提供するワークシート「ScTN質問紙(ライト)の活用」を使ったものです。
■ワークシート ScTN質問紙(ライト)の活用
※Googleドキュメント形式のものは、こちらからアクセスいただけます。
一例として、以下のような手続きで活用されています。
- 教員の自己評価 教員が、「調査結果/自己評価」欄に自己評価を記入する。 「1.5」や「2.5」なども回答(自己評価)として許容する。
- (任意)児童生徒の自己評価 児童生徒の自己評価による調査結果を記入して、1との差を考察の材料にする。 なお、小学校第1学年や2学年、特別支援学級など児童生徒の自己評価による実施が難しいと考えられる場合や、その他の事情から調査を実施しない場合は、教員による自己評価(1)のみとする。
- 今後の取り組みの検討 1・2に基づき、「実践/政策の検討」欄に今後の取り組みを記入する。
- 対話・協議 1~3に基づき対話・協議する、又は1~3を対話・協議を通じて行う。
特に手続きの2は、実施の目的を「学びの構造転換の実現」とするなら、児童生徒の自己評価による調査の実施は必ずしも必要ないとの考えに基づくものです。
詳しくは、当法人公式ウェブ内の「よくある質問」のうち、以下の項をご覧ください。
- ScTN質問紙の質問項目は小1や小2の児童などには難しいと思うのですが、どうすればいいでしょうか?
- ScTN質問紙を教員の自己評価に活用したいのですが、どうすればいいでしょうか?
イ よい実践事例の分析
ScTN質問紙は、よい実践事例の分析にも活用されています。「主体的・対話的で深い学びの経験」領域を構成する観点や評価規準の趣旨は、「全ての児童生徒に自由と自由の相互承認を実質化する」という意味で「よい」と考えられる実践事例を複数観察し、それらの展開や手だてに共通している考え方を取り出したものでもあるからです。
一例として、以下のような手続きで活用されています。教員の自己評価と同じく、ワークシート「ScTN質問紙(ライト)の活用」を使ったものです。
- 実践事例の観察 授業映像の視聴や学校訪問等を通じて、実践事例を観察する。
- 実践事例の分析 ワークシートの「調査結果/自己評価」欄や「実践/政策の検討」欄を使い、観察した実践事例を分析する。
- 対話・協議 1・2に基づき対話・協議する、又は1・2を対話・協議を通じて行う。
上記は、あくまで一例です。クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 パブリック・ライセンスに反しない限り誰でも自由に使えることがScTN質問紙の特長の一つでもありますので、ご自身の必要に応じ、よりよい実践や政策を創り出すためのコミュニケーションやリフレクションのツールとしてさまざまにご活用ください。