書籍『『エミール』を読む』の発刊についてのお知らせ
※上記書影は、下記する当該書籍の紹介ページから転載
当法人の理事・苫野一徳が著書『『エミール』を読む』を執筆しました。岩波書店より、2024年3月8日に発刊されています。
苫野は、本書の「おわりに」において、次のように記しています。
本書は、わたしにとって二冊目のルソー論になります。 前著で取り上げたのは、民主主義のいまなお最も原理的な理論書と言っていい「社会契約論』(「別冊NHK100分de名著 読書の学校 苫野一徳 特別授業『社会契約論』』)。そして今回は、教育の、そして哲学の名著中の名著『エミール』。 ルソーの二つの代表作を、こうして正面から論じることができたことに、いま、特別な感既を禁じ得ずにいます。 二十一世紀、そして二十二世紀に向けて、わたしたちはどんな社会を構想していくべきなのカ? そこにおいて、教育は一体どうあるべきなのか? ルソーか問うた問いの、いわば現代版を、わたし自身、哲学者・教育学者として、これまでずっと探究してきました。その際、ルソーのこの二つの名著は、 つねに最も明るい光を指し示してくれるものでした。 それゆえわたしは、前著においても、本書においても、単にルソーの思想を過去の思想として紹介・解説するのではなく、現代社会や現代教育の間題を根本から解決するための“原理”として示すことをめざしました。彼の思想を、今日のわたしたちに“役立てる”こと。「はじめに」でも述べたとおり、それが本書の強い関心でした。
ぜひ、お手に取ってご覧ください。
・書籍の出版社紹介ページ(岩波書店公式ウェブ内)
以下、書籍紹介ページから転載
【内容】 今日の教育に最も大きな影響を与え、広く知られる名著『エミール』。その中身は今なお驚くほど新しく、みずみずしい魅力にあふれている。この作品をどう味わい、どうわたしたちの思考に取り込み現実の教育に役立てるか。ルソーに惚れ込む気鋭の教育哲学者が、やさしく、そして情熱的に語る。『エミール』入門の決定版。
【目次】 はじめに 凡 例
序章 天才だけど人でなし。そんなルソーをどう考えるか? 天才だけど人でなし 人間ルソー “同じたましい”で読む
第1章 ルソーの思考法 なぜ架空の少年なのか? 子どもを見よ 「子どもの事実」とは? 伊那市立伊那小学校の実践 子どもは、自ら求め、自ら決め出し、自ら動き出す力を持っている存在である 「自然」とは何か 「自由」に生きるための教育 関心によって「事実」は変わる 目的はあくまで「自由」 まとめ
第2章 無菌室で育てない! 手足をめいっぱい伸ばす 愛着理論 無菌室に閉じ込めていないか? 気まぐれに気をつけよ 子どもを不幸にするのは簡単だ 少年エミールについて ルサンチマンとは無縁な成長を 過剰な欲望に苦しまないように 丈夫な体でいるために 子どもを尊重せよ 言葉の教育で注意すべきこと
第3章 欲望と能力を調和させよう 一日に百回ころんでもいい 子どもを無力にしてしまってないか? 大人の善意が子どもの悪徳を生む 理屈ではなく事実を ルールをつくり合う エミールには友だちがいない? みんなの「自由」のためのルール 不幸の本質は「欲望と能力のギャップ」にある 人と比べている限り、永遠に満たされることはない エピクロス主義 競争の弊害 宿命論的人生観 分断される社会とその問題 「よく規制された自由」を 言葉をつめ込むな 遊ぶように学ぶ そこに本当の動機はあるか 学校では「お手紙禁止」? 対話の文化・仕組みをつくる のんびりした時間を大切にしよう 子どもを見る目を鍛えよう
第4章 「自己愛」をねじ曲げない 「それはなんの役に立つのですか?」 必要なのは、「学問を愛する趣味」と「正確で明瞭な観念」のみ きのくに子どもの村学園 数学の新発見をする高校生たち 探究の扉を開く 奇術師のエピソード
第5章 性教育と道徳教育 「人間愛」と「あわれみ」 ゆっくり、ゆっくり 〇歳からはじまるオランダの性教育 歴史的人物を反面教師にする サヴォワの助任司祭の信仰告白 だれもが「良心」を持っている 自然宗教 ソフィー
第6章 理想の恋愛を求めて 男女は平等であると同時に異なっている 男女の教育は異なるべき?――ルソーの限界 ソフィーはどんな女性か 恋 ソフィーと別れて 「一般意志」をつくり合う そんな国はまだ存在しない 結婚
終 章 ルソーが示した道しるべ 『エミール』の続編 続編の結末 まとめ 欲望とのつき合い方を学ぶ
注 おわりに